長期化するコロナ禍で働き方もだいぶ変化したのではないでしょうか。
テレワークが定着した一方で、これまでのように対面する機会が減ったためにコミュニケーションが希薄化してしまったという課題も出ています。
アフターコロナは、オフィス出社とテレワークを組み合わせたハイブリット型のワークスタイルが新しい働き方として定着していくと考えられます。
しかし、オフィスにおいては今後も引き続き、ソーシャルディスタンス(ソーシャル・ディスタンシング)を確保する、換気を行う、衛生管理を行う・・・など感染症対策を徹底しながら業務にあたらなければなりません。
そこで、本記事では、日本経済団体連合会が公開している「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」を基に、ソーシャルディスタンスを考慮したオフィス環境のつくり方について解説します。
また、アフターコロナを見据えたオフィスレイアウトやオフィス家具についても紹介します。
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働き方の新しいスタイル
先日、厚生労働省は「新しい生活様式」の実践例を公表しました。
感染拡大の予防と社会経済活動の両立を図っていくためには、①身体的距離の確保 ②マスクの着用 ③手洗い といった感染予防の3つの基本を一人ひとりが心がけることが重要です。
また「新しい生活様式」の実践例では、経済活動を行う上で「働き方の新しいスタイル」も提言されています。
- テレワークやローテーション勤務
- 時差通勤でゆったりと
- オフィスはひろびろと
- 会議はオンライン
- 名刺交換はオンライン
- 対面での打合せは換気とマスク
人と人の間隔はできるだけ2メートル空けること、会話をする際は可能な限り真正面を避けることを推奨しています。
新型コロナウイルスの主要な感染経路の一つは「飛沫感染」だと言われています。
くしゃみや咳をするとしぶきは2メートルほど飛びます。
その飛沫を浴びないために人と人との間隔を2メートル空けることが重要だということです。
ソーシャルディスタンスとは?
「社会距離戦略(ソーシャル・ディスタンシング)」の実践が世界中で呼びかけられています。
これは、人と人との物理的な距離を確保することで、感染拡大を阻止するという社会的措置のことです。
海外では、6フィート(およそ1.8メートル)以上の距離を取ることが推奨されています。
日本ではソーシャルディスタンスと言われていますが、正しくはソーシャル・ディスタンシング(Social Distancing)と言います。
WHOでは、ソーシャル・ディスタンシングではなく、物理的距離を意味するフィジカル・ディスタンシング(Physical Distancing)という言葉に置き換えるようになりました。
本記事では日本で広く浸透している「ソーシャルディスタンス」という表記で統一します。
オフィスにおける感染予防対策のガイドラインとは?
オフィス内においてどのような感染防止策を講じることができるでしょうか。
各業界団体がガイドラインを出していますが、ここでは日本経済団体連合会より公開されている「オフィスにおける新型コロナウイルス感染予防対策ガイドライン」に従い、社員が安心して働けるオフィス環境の整備方法について考えたいと思います。
こちらのガイドラインよりオフィス環境に関する項目をピックアップし、オフィスレイアウトや環境づくりにどのように反映させれば良いのかを解説します。(その他の対策についてはこちらをご覧ください。)
まずはオフィス環境に関する具体的な対策について下記にまとめます。
《 オフィス全般 》
- 2メートルを目安に一定の距離を保てるよう人員配置の見直しを行う。
- 座席配置は広々と設置する。
- 仕切りのない対面の座席配置は避ける。
- 座席配置は可能な限り対角に配置、横並びにする。
- 頻繁に対面する場所は、アクリル板・透明ビニールカーテンなどで遮蔽する。
- 会議を対面で行う場合、マスクを着用、換気に留意し、近距離や対面に座らないように工夫する。
- 窓が開く場合1時間に2回以上、窓を開け換気をする(寒冷期はこまめに)。
- オフィス内の湿度は、空調設備や加湿器を適切に使用し、相対湿度40%~70%になるよう努める。
《 休憩スペース 》
- 屋内の休憩スペースは、スペースの確保、常時換気を行うなど、3つの密を防ぐことを徹底する。
- 休憩を取る場合は2メートルを目安に距離を確保し、一定数以上が同時に休憩スペースに入らないように、休憩スペースの追設や時間をずらすなどの工夫をする。
- 食堂などで飲食する場合は、椅子を間引くなどにより2メートルを目安に距離を確保する。また、施設の制約により困難な場合も対面で座らないようにする
オフィス環境において重要なポイントは次の4点です。
①距離を確保する ②対面にならない ③仕切る ④換気をする
オフィス内は3密になりがちです。
密閉された空間に人が集まり、互いに手が届く距離で会話をします。
感染リスクを極力減らし、安心して働ける環境を整えることは喫緊の課題です。
次に、ソーシャルディスタンスを保ったレイアウトの基本について解説します。
ソーシャルディスタンスを確保したオフィスレイアウトの基本
現在のオフィスでソーシャルディスタンスを確保したレイアウトに変更する場合、考えなければならない内容は次の通りです。
- 人との距離を2メートル確保する
- 対角・横並びの座席構成にする
- 飛沫防止パネル(仕切り板)・パーテーションで仕切る
現在、飛沫防止パネルで対応されているオフィスもあると思いますが、人と人との間隔をできるだけ2メートル確保することが最も重要です。
そして、咳やくしゃみ、会話による飛沫を直接浴びることを防ぐために対面に座らないこと、さらに飛沫防止パネルや仕切り板などで、飛んだ飛沫を遮る対策を施すことで感染リスクを下げることができます。
ワークスペースのレイアウト
現在のワークスペースの多くは、4〜6人構成の島型レイアウト、もしくはひとつのフリーアドレスデスクを4〜6人で使用していると思います。
一人分の横幅を最もスタンダードな1200mmとすると、一つ置きに座ることで両隣の人との間隔は2.4メートルになります(※上表)。
対面して座ることを避けると、通常使用されている人数の50%(2〜3人)で使用することになります。
島型レイアウトの場合、端に上長席が設置されていますが、島に対面した座席構成になりますので使用はおすすめできません。
安全性を高めるためにデスク中央や人と人の間に飛沫防止パネルを設置することもおすすめします。
一方、どうしてもこれ以上の人数で使用しなければならない場合には必ず、前方と横方向に飛沫防止パネルを設置しましょう。
パーテーションの飛沫防止効果については、理化学研究所と豊橋技術科学大学 飯田明由教授らの共同研究で、オフィスで使われるパーテーション(仕切り板)の高さが、人の鼻程度の高さでは飛沫を防ぐ効果が低く、人の頭の高さ程度まであれば効果が高いことが分かりました。
パーテーションの場合、高さ1400mm程度で着席時に頭まで隠れる高さになります。
デスク上に飛沫防止パネル(仕切り板)を設置する場合は、デスクの高さが700〜720mm程度なので、680mm以上を目安にすると良いことになります。
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ミーティングスペースのレイアウト
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- できるだけ換気を行いましょう。座席は対角線上に配置します。
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- ホワイトボードパーテーションで仕切ることもできます。
ミーティングスペースは壁に囲まれているため密閉した空間になりがちです。
窓がある場合は窓を開けて換気を行います。
風の入り口と出口を対角線上に2カ所つくることで風の通り道ができ換気効率が良くなります。
窓が1カ所しかない場合は、入り口のドアを開けることで風の通り道をつくります。
風が起こらない場合はサーキュレーターや扇風機で空気を攪拌し、淀んだ空気を外へ送り出すようにしましょう。
換気回数は、経団連のガイドラインでは1時間に2回以上を推奨していますが、回数を多くするとより効果的です。
座席は対面しないように対角線上に配置します。
テーブルの中央には飛沫防止パネルを設置しましょう。
また、ワークスペース内のミーティングスペースはホワイトボードタイプのパーテーションで仕切っても良いでしょう。
共有物なので使用後は消毒をするとより安心です。
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リフレッシュスペースのレイアウト
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- 座席は片側のみを利用し、反対側は使用しないようにします。
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- カウンター席を利用する場合はできるだけ間隔を2m空けます。
昨今ではリフレッシュスペースを設けている企業も数多くあります。
社員同士のコミュニケーションの場として設置されていますが、コロナ禍においては密になることを避けなければなりません。
レイアウト方法はワークスペースと基本的には同じです。
特にリフレッシュスペースは対面席が多いので、その場合は片側の席を使用し、向かい側の席は椅子を移動させるなどして使用できないように工夫することで密集しない環境をつくりましょう。
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現在のオフィスでできるワークスペースのレイアウト方法
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- 【BEFORE】 社員同士が向かい合う形になったレイアウト
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- 【AFTER】 壁方向にレイアウトし、中央は飛沫防止パネルを設置
現在のオフィスレイアウトをソーシャルディスタンス対応のレイアウトに変更する方法を解説します。
部署ごとにデスクを対向させ、社員同士が向かい合う形になった島(島型レイアウト)が2列あるオフィスを想定します。
ソーシャルディスタンスを確保したレイアウトでは、人と人の間隔を2メートル(最低1メートル)空け、できるだけ対面を避ける、もしくは仕切り板で飛沫の飛散を防ぎます。
そこで、極力対面した座席構成を避けるように、向かい合わせになったデスクのレイアウトを背中合わせになるように変更します(※上表)。
中央の列は向かい合わせになってしまうためローパーテーションや飛沫防止パネル等で仕切ります。
両端の列は壁側を向いた配置になるため対面になりません。
さらに、スペースに余裕がある場合は、デスクとデスク間の通路にハイベースタイプの収納庫を設置することで、新たに収納スペースを設けることができます。
コロナの終息後は収納庫を利用して背面同士の社員が使用するミーティングスペースとして活用できます。
【 オフィスレイアウトの詳細はこちら 】
ワークスペースのレイアウト別 感染予防対策例
本章では、よくあるワークスペースのデスクレイアウト別感染症予防対策例をご紹介します。
ワークスペースは最も人が集まる場所ですから、しっかりと対策を施し、社員が安心して働けるオフィス環境を構築することが重要です。
対向式レイアウト : 島型レイアウト
【飛沫防止アクリルパネル(卓上タイプ)】 上長の席を使用する場合は、必ず正面にパネルを設置します。
デスクが互いに向き合っているレイアウトです。
コミュニケーションが取りやすく、マネージメントもしやすいというメリットから、日本の企業の約9割がこの島型レイアウトを採用しているとも言われています。
感染症対策としてまず行いたいことは、飛沫防止パネルの設置です。
特に人と人との距離を空けられない場合は、前後左右に設置します。
パネルの高さは頭が隠れるくらいの高さがあるものをおすすめします。
対向式レイアウト : フリーアドレス
【飛沫防止アクリルパネル(卓上タイプ)】 拭き掃除で清潔に保つことができます。
働き方改革が推進される中で、フリーアドレスオフィスを採用する企業が増加しています。
新型コロナウイルス感染症の流行期においては、フリーアドレスは推奨はされていません。
不特定多数の人が使用するため、万が一感染者が発生した場合に接触者の把握が難しいからです。
しかし、レイアウト変更のしやすさや在席者数を調整できるので感染症対策を講じやすいのがフリーアドレスデスクのメリットです。
座席の使用前後は必ず消毒をするといったルールを決めることが重要です。
そこで、設置する飛沫防止パネルも掃除がしやすい素材のものを採用すると良いでしょう。
同向式レイアウト : 並列式レイアウト
【OCパーテーション(布張りタイプ)】 高さ1200 ・ 1600 ・ 1800mmの3タイプ 連結金具を噛み合わせるだけで簡単に連結できるローパーテーション
デスクが一方向を向いたレイアウトです。
主に学校や塾で採用されているレイアウトで「スクール式」レイアウトとも呼ばれています。
前の人と目線が合わないレイアウトのため集中できるといったメリットがあります。
コロナ禍であっても、対面しないため感染リスクを低くすることができるレイアウトです。
背面式レイアウト
【パネルデスク KA・KO・I】 人数やスペースに合わせて連結・拡張ができます。
デスクを背中合わせに配置したレイアウトです。
デスクを背面同士にレイアウトすることで、対面を避けることができるといったメリットがあります。
また、お互いに顔を合わせないので集中しなければならない業務に向いているレイアウトと言えます。
デスクワークを考慮したサイズ設計で、天板の幅は1000mmを採用しています(内寸幅952mm)。
オフィススペースに合わせて、デスクを連結しレイアウトします。
天板は、傷や汚れに強いメラミン樹脂化粧板を天板に使用しており、水拭きすることもできます。
アフターコロナのオフィスとは?
新型コロナウイルスの流行以前は、部署を越えた交流を促すことで社員同士が刺激し合いイノベーションを起こすということがオフィスの役割として求められていました。
言わば「共創の場」として機能することがオフィスの役割でした。
一方、個別(パーソナル)ブースといったオフィス家具が発売され「集中の場」をオフィス内に設けることも個人の生産性を上げる手段として取り入れられるようになりました。
緊急事態宣言の発令によりテレワークが推進される状況下で、オフィスでしかできない仕事とオフィスでなくてもできる仕事が明確になったと思います。
アフターコロナのオフィスはより仕事に適した空間へと変化していくでしょう。
そのようなアフターコロナのオフィスを見据えたオフィス家具やツールをご紹介します。
半個室空間で集中できるパーソナルブース
【drape ドレープ/テトラ】 集中して作業に取り組むための集中ブース。仕事に没頭したい時に活躍するプライベート空間です。
【パネル付きソファ ハイビス】 セミクローズドな空間で集中やリラックスができるソファタイプの個別ブース
コロナ禍においては人と人の接触を避けるために活用できる家具ですが、本来はザワザワしたオフィス内でも集中できる空間がほしいというニーズに応えたものです。
1時間だけ集中したい、取引先との打ち合わせにWEB会議を利用したい、オンラインセミナーに参加したいといった社員のニーズはこれからも高くなると思われます。
個人の能力を最大化し、効率を最適化するオフィス環境づくりは、企業の生産性向上に繋がります。
対面せずコミュニケーションが弾むミーティングセット
【医療機器メーカー 様|オフィスデザイン事例】 コミュニケーションの活性化を意識した会議スペースは新たな発想を生み出すスペースに。
新しいミーティングの形式として対面しないミーティングが行われています。
ノートPCの普及によりカジュアルミーティングが行われるようになったり、社員同士の交流の促進によりフリーディスカッションが行われたりする機会が増えたことが背景にあります。
対面での会話をなるべく避けなければいけない状況においてだけでなく、アフターコロナのオフィスでも自然と受け入れられているミーティングの新しい形なのではないかと思います。
遠方の相手ともすぐにWEB会議(テレビ会議)
【WEB会議用デバイス Acendo Vibe】
カメラ・マイク・スピーカーと3つの機能を1台にまとめたWEB会議用デバイス。高画像・高音質で遠隔でもスムーズな会議が行えます。
外出や移動が自粛される中、WEB会議はかなり普及したのではないでしょうか。
最近では、電話やWEB会議システムを使ってお客様を訪問をしない、インサイドセールスという営業手法が用いられるようになりましたが、実際にはまだお客様を訪問する外勤営業の方が一般的だと思います。
しかし今回のような移動制限がある中で、いつでも・どこでも・だれとでも会話ができるというオンラインのメリットを体験したことで、今後はよりWEB会議を用いる機会が増えることは間違いないでしょう。
まとめ|アフターコロナを見据えた未来志向のオフィスをつくる
新型コロナウイルスの流行は働き方にも大きな変化をもたらしています。
「オフィスはもう必要ない!」とオフィスを引き払う選択をした企業もある一方で、「出社しないと効率が悪い」と通常出勤に戻す選択をした企業もあります。
どちらの選択も有意義だったのは、自分たちの仕事にとってどんな環境が必要なのかという気づきを得られたということでしょう。
ウィズコロナの生活は長期戦になるとも言われています。
ソーシャルディスタンスを確保する、なるべく対面を避ける、換気をするといったガイドラインを参考にしながら、アフターコロナを見据えた未来志向のオフィス環境をつくっていきましょう。
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