私たちがエアコンと呼んでいる機器は、英語で“Air conditioner”と訳される通り、室内の温度や湿度を調和させて、そこにいる人たちが快適に過ごせる環境づくりを目的としています。
快適な空気環境をつくるには「温度」「湿度」「清浄度」「気流」(空気調和の4要素)の4つが必要だと言われています。本コラムでは4要素の「気流」と「清浄度」に関わる、換気を取り上げ、快適なオフィス環境をつくる換気方法について解説します。
私たちは今、新型コロナウイルスの流行によって不安を抱えながら出勤しています。オフィスの換気システムについて知ること、必要換気量はどれくらいなのかを知ること、そして効率的な換気方法を知ることで少しでもその不安を軽減できればと思います。
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エアコンは換気ができない!?
換気設備が稼働しているかチェックをしましょう
日頃、私たちはオフィスで冷暖房を利用していますが、換気のことまで気にしている人は少ないのではないでしょうか。オフィスビルの換気設備はテナント側が制御できる場合と管理会社側で制御されている場合があります。まずは、オフィスに換気設備専用のリモコンスイッチがあるか、もしくはエアコンと連動されているかをチェックし、自分たちで換気を制御できるようであればスイッチを入れて換気システムを稼働させましょう。
その際、注意したいのが冷暖房の必要がない、春・秋のような中間期です。特にエアコンと連動型の換気設備の場合、換気機能のスイッチも消されていることがあります。換気設備は常時スイッチをONにしておきましょう。
換気機器と空気清浄機は役割・仕組みが違う!
換気機器も空気清浄機も室内の空気をきれいに保つための機器です。
一見、同じことをしているように思われますが、その役割や仕組みには大きな違いがあります。
換気機器は、室内の汚れた空気を外に排出し、屋外から新鮮な空気を取り入れることで空気の入れ替えを行うものです。一方、空気清浄機は、機械を介して室内に浮遊する埃、花粉、PM2.5などの粒子やニオイの元となるガス成分を取り除き、室内の空気を循環させるものです。
換気機器か空気清浄機のどちらか一方を使えば良いということではなく、換気を行った上で補完するものとして空気清浄機を使うと良いでしょう。
換気方法は2つある。オフィスの換気システムとは?
換気方法は、大きく分けると「自然換気」と「機械換気」があります。
「自然換気」は、風力や温度差といった自然の力を利用して外気と室内の空気を入れ換る方法です。窓開けによる換気方法がこれに該当します。
部屋の内外では風圧差や温度差があります。室内の空気の圧力が外より低い場合(負圧)、空気は室外から室内へ流れ込むことで、室内外の圧力を均等にしようとします。
また、冷たい空気は暖かい空気よりも密度が高いために重く、暖かい空気の下に潜り込むように流れ込みます。このような空気の性質を理解し、換気口の位置、開口部の面積を調節して換気を行います。
自然換気は、季節や日によっては風が起こりづらいこともあり、安定した換気の維持・管理ができないというデメリットがあります。
一方「機械換気」は、送風機(ファン)を使って給気・排気を強制的に行います。換気方式は自然換気との組み合わせにより、「第一種換気」「第二種換気」「第三種換気」の3タイプに分けられます。
「第一種換気」は、給気・排気の両方を機械で行います。
空気の流れを機械的に制御するため、計画的な換気の維持・管理ができます。システマチックな管理が求められるオフィスビルなどの事務所、劇場、映画館など様々な建物でこの方式を採用しています。
また最近では、高気密・高断熱の住宅でも採用されています。
「第二種換気」は、給気を機械、排気を自然換気で行います。
強制的に空気を送り込むことで、室内を正圧の状態(室内の圧力が外より高い状態)にします。外から埃や汚染した空気が入らないので、無菌室や手術室、食品加工工場、精密機器工場など高い清浄度が求められる空間で採用されています。
「第三種換気」は、給気を自然、排気を機械で行います。
第二種換気とは逆に強制的に屋外へ空気を排出させることで、室内は負圧の状態(室内の圧力が外より低い状態)になります。室内の空気が流れ出ることを防げるので、トイレ、厨房など水蒸気や臭いが発生する空間で採用されています。
オフィスビルで定められている「空気環境基準」とは?
建物には人が健康上安全に過ごせるよう、空気中に含まれる成分の基準が設けられています。もし、換気設備の不備によって汚れた空気が室内に充満してしまうと、感染症・アレルギー・中毒などの健康被害を引き起こしかねません。
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下、ビル管理法)では、「空気環境の調整に関する基準」に従って屋内の空気環境を良好に保つことが義務付けられています。
ビルのオーナーは2ヶ月内に1回、空気環境測定を行わなければなりません。浮遊粉じん・一酸化炭素・二酸化炭素・温度・湿度・気流(・ホルムアルデヒド)を測定し、基準値を満たしていない場合は罰則や行政措置の対象になります。
法律に従って維持・管理されている限りは、空気環境において「高い水準の快適な環境を実現(※)」していることになります。
《 空気環境基準 》
浮遊粉じんの量 | 0.15 mg/m3以下 |
一酸化炭素の含有率 | 100万分の10以下(=10ppm以下) ※特例として外気がすでに10ppm以上ある場合には20ppm以下 |
二酸化炭素の含有率 | 100万分の1000以下(=1000ppm以下) |
温度 | 1. 17℃以上28℃以下 2. 居室における温度を外気の温度より低くする場合は、その差を著しくしないこと。 |
相対湿度 | 40%以上70%以下 |
気流 | 0.5 m/秒以下 |
ホルムアルデヒドの量 | 0.1 mg/m3以下(=0.08 ppm以下) |
オフィスの換気は十分にできている?必要換気量と必要換気回数とは?
オフィスの換気が十分にできているかは気になるところです。
必要換気量の求め方は様々な方法があります。例えば、在室人員によるCO2発生量、火を使うことによる排ガス発生量・発熱量、タバコや臭気など居室の使用条件などから求める方法です。
ここではオフィス(事務所)における必要換気量について解説します。
オフィスは基本的に執務空間であるため、人から排出されるCO2が主な汚染物質になります。そこで、CO2の除去を目的としている計算公式を紹介したいと思います。
① 一人あたりの占有面積から求める方法
必要換気量(m³/h)= 20 × 居室の床面積(m²)÷ 一人あたりの占有面積(m²)
※1人あたりの占有面積が10を越える場合は10とする。
この公式は、建築基準法施行令第20条の2第2号に基づいています。
居室の床面積(m²)÷ 一人あたりの占有面積(m²)は「在室人数」を算出しており、オフィスを使用している社員数から必要換気量を求める方法です。
② 床面積あたりの必要換気量に基づく方法
必要換気量(m³/h)= 居室の床面積あたりの換気量(m³/m²・h)× 居室の床面積(m²)
《 居室の必要換気量参考値 》
室名 | 標準在室密度(m²/人) | 必要換気量(m³/m²・h) |
---|---|---|
事務所(個室) | 5.6 | 6.0 |
事務所(一般) | 4.2 | 7.2 |
休憩室 | 2.0 | 15.0 |
小会議室 | 1.0 | 30.0 |
※ 空調・衛生工学会規格 HASS 102 (1972) より抜粋
この公式を使って必要換気量を求める場合は、床面積あたりの必要換気量の参考数値が必要になります。ここでは、空調・衛生工学会が示す参考値を使用して必要換気量を算出します。この値は一人あたりの占有面積(標準在室密度)が予め設定されています。
換気量は「一人あたり毎時30m³」を目安にする
以上、2つの公式は「一人あたりの必要換気量の基準」が異なるという点に注意します(※下表参照)。
- ① 建築基準法施行令第20条の2第2号
- 20m³/h・人
(成人男子が静かに座っている時のCO2排出量に基づいた必要換気量)
- ② 空調・衛生工学会規格 HASS 102 1972
- 30m³/h・人
(室内炭酸ガス許容濃度0.1%になるよう居室の必要換気量を算出)
厚生労働省では、ビル管理法における空気環境の調整に関する基準に適合していれば、必要換気量(一人あたり毎時30m³)を満たすことになると言っています。(厚生労働省:「換気の悪い密閉空間」を 改善するための換気の方法)
換気量が十分か否かの判断基準として「一人あたり毎時30m³」が目安となりそうです。
②の計算公式(床面積あたりから求める方法)を使うと、現オフィスの在室者数の上限数が算出できます。算出された数値が在室者数より小さければ十分な換気量であると言えますし、逆に大きければ、一度に在室する人数が多いということになります。
例えば、貴社のオフィスが30坪(約100m²)だったとします。一人あたりの在室密度が4.2m²(※事務所(一般))なので、現在24人以上の社員が一度に在室している場合は十分な換気が行えていないことになります。
なお、貴社の正確な換気量については換気設計者や専門業者に確認することをおすすめします。
- 床面積あたりの必要換気量
- 7.2m³/m²・h × 100m² = 720m³/h
- 在室者数の上限数
- 720m³/m²・h ÷ 30m³/h・人 = 24人
必要換気回数は空気の入れ替わる回数
必要換気回数とは「1時間に2回窓を開ける」といったような回数を数えることではありません。
居室に給気もしくは排気される空気量を居室の容積で割ったものです。
少々難しく思われますが「部屋中の空気が何回入れ替わるか」と考えると理解しやすいかもしれません。
建築基準法ではシックハウス対策として換気回数が定められています。例えば、居室の換気回数は0.5回/hとなっていますが、「1時間で居室の半分の空気が入れ替わる」ということを意味します。
ビル管理法では換気回数ではなく、室内の一酸化炭素濃度や二酸化炭素濃度の基準を設定することで、居室の適切な換気量を確保することを求めています。
- 関連記事
- ウィズコロナの時代において社員が安心して働ける環境は必須です。ソーシャル・ディスタンスを考慮したオフィスづくりについて解説します。「ソーシャル・ディスタンスを考慮した未来志向のオフィス環境とは?」も合わせてご覧ください。
コロナ対策にはプラスアルファの換気対策を!
日本医師会 COVID-19有識者会議より
コロナウイルスの感染経路は、空気感染・飛沫感染・接触感染と3つの経路があると言われています。感染防止対策として、マスク、手洗い、消毒、飛沫防止パーテーションと様々な対策を講じていると思いますが、換気対策も非常に重要な対策の一つです。
厚生労働省では、換気の悪い密閉空間は感染リスクが高いとし改善を呼びかけています。
ここでは、ビルの換気設備の他にできる換気対策として、窓を開けた換気方法と窓がない場合の換気方法について解説します。
窓を開けた換気方法
-
- 対角線上の窓を開けることで風の通り道ができます。
-
- 近くの窓だと空気の循環悪く、淀みができてしまいます。
窓の開閉が可能なオフィスでは窓を開けて積極的な換気を行うことが大切です。
窓を2カ所開け、風の「入口」と「出口」をつくります。可能であれば、対角線上にある窓を開けると、風の通り道ができるので室内の空気が循環しやすくなり、換気効率が良くなります(※上図・左)。近くの窓を2カ所開けても空気がうまく循環できず、淀みができて換気効率が悪くなってしまいます(※上図・右)。
窓が1カ所しかない場合は、ドアを開けて風の通り道を確保します。その際、扇風機の風を窓の内側から外へ向けて送ることで室内の空気を外に排出されて効率の良い換気ができます。
厚生労働省「3つの密を避けるための手引き」では、風の流れができるよう、2方向の窓を、1回、数分間程度、全開にすること、換気回数は毎時2回以上確保することを推奨しています。
窓が開かない場合の換気方法
-
- ショートサーキット現象で空気が循環しにくい。
-
- サーキュレーターを使って外からの空気を取り込みます。
ビルによっては窓の開閉ができないオフィスもあります。
その場合はドアを開け、扇風機をドアの内側から外に向けて設置します(※上図・左)。その際、扇風機によって外から入ってきた空気がすぐに外へ排出されてしまうショートサーキットという現象を防ぐために、サーキュレーターを部屋の内側に向けて設置します。これにより外の空気を室内に取り込むことができるので換気効率が良くなります(※上図・右)。
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寒さで健康を損ねない冬場の換気方法
ただでさえ寒い冬場は、窓を開けることを躊躇いがちですが、新型コロナウイルス感染防止対策としては、十分な換気を行う必要があります。 そこで、換気をしつつ、寒さで健康を損なわないよう、冬場の換気方法について解説します。
窓の開放による方法
換気機能を持つ冷暖房設備や機械換気設備が設置されていない、換気量が十分でない場合は窓を開けて換気を行います。
- 居室の温度18℃以上、相対湿度40%以上に維持できる範囲内で、暖房器具を使用しながら、一方向の窓を常時開けて、連続的に換気を行う
- 居室の温度および相対湿度を維持しようとすると窓を十分に開けられない場合は、窓からの換気と併せて、可搬式の空気清浄機(※)を併用する
※)空気清浄機はHEPAフィルタによるろ過式で、かつ風量が毎分5m³程度以上のものを使用する。
※)人の居場所から10m²(6畳)程度の範囲内に空気清浄機を設置する。
※)外気を取り入れる風向きと空気清浄機の風向きを一致させ、空気のよどみを発生させないようにする。
機械換気(空気調和設備・機械換気設備)による方法
機械換気設備等が設置されている場合は、必要換気量の確保および居室の温度・相対湿度を適度に維持します。
- 機械換気設備等の外気取り入れ量を調整することで、必要換気量(一人あたり毎時30m³)確保する(※)
- 冷暖房設備により、居室の温度18℃以上、相対湿度40%以上に維持する
※)必要換気量を満たしているかを確認する方法として、二酸化炭素濃度測定器を使用し、室内の二酸化炭素濃度が1000ppmを超えていないかを確認することも有効。
換気の悪い密閉空間にならないよう換気を行うことはもちろん重要ですが、人の密集、密接な接触を避ける対策も併せて行うことが必要だということも今一度確認しておきましょう。
参考:厚生労働省『冬場における「換気の悪い密閉空間」を改善するための換気の方法』
まとめ|社員が安心して仕事に集中できる環境をつくりましょう
日頃、オフィスで「換気」のことを気にする機会はあまりないかもしれません。しかし、汚れた空気は私たちの健康を害してしまう、とても恐ろしいものなのです。
オフィスビルでは機械換気によって給気・排気を制御することで計画的に空気の入れ替えを行なっています。また、ビル管理法では、空気環境の調整に関する基準に従って屋内の空気環境を良好に保つことが義務付けられていますので、ビルの維持管理権原者が換気設備の点検・整備を適切に行なっている限りは、オフィス内の空気環境は安全だと言えます。
昨今は新型コロナウイルスの流行により会社に行くことに不安を感じている方が多いと思います。確実な予防策はありませんが、窓開けや扇風機、サーキュレーターを使用するなどして換気効率を上げるなど、できる対策を積み重ねることで、感染リスクを減らし、少しでも安心して仕事に取り組める環境づくりをしていきましょう。
もし、オフィス環境についてお困りのことがあればぜひご相談ください。
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- まずはカタログ請求!
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まずはカタログを見てみたいという方 -
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すでに相談したいことがあるという方 -
※ 建築物環境衛生管理基準は、「空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ、昆虫等の防除その他環境衛生上良好な状態を維持するのに必要な措置について定める」と規定されており、高い水準の快適な環境の実現を目的とした基準です。
厚生労働省:建築物環境衛生管理基準とは