今回のご相談は「古いビルでテナントを借りる際の注意点はありますか」というご相談です。
テナントへの入居の際は、原状回復済み(使用できる状態)となっているのが一般的です。
ですが原状回復の大半は、内装など見た目部分の回復に留まることが多く、見た目以外で気をつける箇所があるのかどうかのご相談です。
古いビルでテナントを借りる際の注意点とは?
古いビルでテナントを借りる予定なのですが、どのようなポイントを確認したらよいでしょうか?
古いビルの場合、確認しておくポイントは大きく分けると5項目になります。
- 給排水などの設備
- 電気系統
- ネットワーク・電話
- 原状回復以外の経年劣化箇所
- 工事区分( A/B/C工事 )
給排水などの設備における注意点
まずは、給排水などの設備における注意点にはどのようなことがありますか?
給湯室やトイレを変更する場合、古い水道管は鉄管で配管されており給水ルート変更時の融通が利きません。
そのため、塩化ビニール製や架橋ポリエチレンのパイプで配管し直す必要があります。
また、排水経路を変更する場合、排水の勾配(1/100勾配:1m毎に1cmの勾配)を取らなければならず、場合によっては床の高さを上げる必要があります。
給排水によって、床まで変える必要がでてくるとは大変ですね。
全体のプランニングや設備をどうするかで大きく異なってきます。
また給排水の変更予定があれば配管を通すPS(パイプスペース、パイプシャフト)とMB(メーターボックス)の位置を事前に確認しておいてください。
- 普段気にしない給排水の配管。
設備の配管取りまわしは、制限が多く他の工事とも絡むためにプランニングが大切です。
- 排水の勾配とPSまでの排水距離により、床の高さをどの程度高くするかなど内装工事にも絡んできます。
また、給湯器がある場合はガス式(都市ガス、プロパンガス)か、電気式かを確認します。
ガス式の場合はガス栓含めてガス会社での作業を推奨しています。
また製造から10年以上経過している場合は、交換を考慮した方が良いでしょう。
電気系統における注意点
電気系統における注意点にはどのようなことがありますか?
分電盤を確認し、どれくらいの電源が使用できるのかを確認しましょう。
(電気契約容量の上限確認)主幹ブレーカーの下に分岐ブレーカーがあり、分岐ブレーカー1つにつき20A(上限2000W)まで使用できます。
オフィスで利用する、電気製品と消費電力により使用するブレーカーを複数に分ける必要があり、全体のプランニングに対して電気容量に問題がないかを確認する必要があります。
また1つの電気製品で1000Wを超える場合は、事故防止として単独で1つの分岐にする必要があります。
もし、電気容量が足りない場合や動力が200Vを必要とする電気製品がある場合は、ビルの配電盤から電気線を追加する工事が発生します。
(消費電力参考例 : パソコン【70W】 テレビ【100W】 電子レンジ【1400W】 複合機【200W】 冷蔵庫【240W】)
- 分岐ブレーカーは、20A(2000W)までの使用量のために全体のプランニングに合わせて使用する分岐ブレーカー数を確認する必要があります。
- 電気容量が足りない場合はビルの配電盤から電気配線の追加工事を行います。
ネットワーク・電話における注意点
ネットワーク・電話における注意点にはどのようなことがありますか?
ビルに引き込まれている、光回線やアナログ回線を確認します。
MDF(主配線盤)とIDF(中間配線盤)と呼ばれる回線をまとめる基盤がありますので、その状況を確認します。
引き込まれている回線により契約できる回線や線数に制限がでる場合や、新たに回線を引き込む必要がある場合があります。
また、MDF、IDFは重要設備となるために鍵を掛けられています。開錠に際してはビルオーナーに手配を依頼する必要があります。
オフィスエリア内のネットワーク構築における注意点にはどのようなことがありますか?
古いビルの場合は直床タイプの床が多く、ネットワークや電源などの配線はOAフロアで二重床にして床下配線にする方法と、床上にモールを這わせて床上配線にする方法があります。
全体のプランニングに合わせて配線計画をする必要がでてきます。
OAフロアは、レイアウト変更や人数の変更に容易に対応できるメリットがありますので可能であればOAフロアを採用することを検討してはいかがでしょうか。
OAフロアの詳しい紹介は「OAフロア(オフィスの床下配線)を綺麗にするコツは?」をご覧下さい。
- 光回線やアナログ回線が引き込まれているMDF(主配線盤)、ネットワーク配線を行うためには必ず確認が必要です。
- OAフロアを使用することでレイアウト変更に用意に対応できます。
原状回復以外の経年劣化箇所における注意点
原状回復以外の経年劣化箇所ですが、床・壁・天井は原状回復が行われており綺麗な状態になっていますが、それ以外のどのような点に注意が必要でしょうか?
原状回復とは、以前の借主が入居時の状態に戻すことをいいます。
古いビルの場合、自然発生的な経年劣化については見落とされがちです。
経験上チェックしておいた方が良い箇所は、サッシ周りのコーキング、水周りのコーキング、コンクリートスラブ部分のヒビなど、一見しただけではわかりづらい箇所です。
特にコーキング系は水漏れの原因となるために発見した際はビルオーナーに直ぐ話しをしてください。
- サッシ周りのコーキング、水周りのコーキングが劣化している場合、雨漏りや水漏れの原因となります。経年劣化で傷みやすい箇所なので確認しておくと良いでしょう。
関連記事:「オフィスの原状回復の範囲はどこまで?ルールをきちんと知ってトラブルを防ぐ!その対策とは?」
- 原状回復されていないテナントもありますので、工事区分や費用についてはビルオーナーと交渉する必要があります。
工事区分(A/B/C工事)における注意点
工事区分の違いとはなんですか?
工事区分とは、「誰の発注で、誰の費用で、誰の所有になるか」の区分です。
特に古いビルの場合は「給排水などの設備」や「電気工事」など、共用部に影響がある場合があります。
設備や電気などは工事区分により、思わぬ費用負担が発生する場合があるため、契約前に工事区分を必ず確認する必要があります。
A工事とは?
ビル全体の共用部や設備(テナント区画外の共用箇所)の工事が「A工事」です。
工事業者の選定、工事費用負担はビルオーナーが行い、所有権もビルオーナーです。
一般的に、テナント外のビル共有箇所工事のためにテナント側がA工事に関わることは殆どありません。
B工事とは?
テナント側の要望により、ビルオーナーが行う工事が「B工事」です。
工事業者の選定はビルオーナー、工事費用はテナントが負担、所有権はビルオーナーです。
一般的に、設備や電源(分電盤、給排水、設備工事)などビル全体に影響を与える工事が含まれます。
所有権はビルオーナーとなり、工事業者もビルオーナーが選定するために工事費用が高くなる傾向があります。
C工事とは?
テナント側の要望をビルオーナーが承認し、テナント側が行う工事が「C工事」です。
工事業者の選定、工事費用負担はテナント側が行い、所有権もテナント側です。
一般的に、テナントの内装工事、什器、照明、ネットワークなど、テナント内部で納まる工事となりますが、関連して行われる設備や電源(分電盤、給排水、設備工事)といったB工事に区分される工事が、C工事になる場合もあります。
工事区分については、ビルオーナーとの間で「どこからどこまで」が工事区分となるのかを明確に確認する必要があります。
特にB工事とC工事では「工事業者選定」「工事費用」の面から大きな差がでますので、しっかりと工事区分について確認しましょう。
古いビルだからか確認する箇所がたくさんありますね、なんだか心配になってきました。
古いビルでテナントを借りる前に最低限チェックする箇所をお伝えしましたが、古いビルでも快適なオフィスを作ることはできます。
反面、確認する箇所がたくさんあることも事実です。
ですので、そういった際にはオフィスプランニングのプロに相談してください。
現場調査を含めてプランニングの全体構成から施工まで対応しています。
お客様のご要望にあったご提案をいたしますので、お困りごとがありましたらお問い合わせください。
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